ふたば★学園祭におけるAI生成コンテンツ頒布物ガイドライン

ふたば★学園祭におけるAI生成コンテンツ頒布物ガイドライン

昨今、AIイラストなどAI生成コンテンツについて問題となっています。 ふたば★学園祭において、AI生成コンテンツ等の頒布について一定のガイドラインを設けます。

概要としては次の通りです。

  • 画像を元として画像を生成する「AI生成コンテンツ」(いわゆるi2i)において、「自分が権利を持たず、かつパブリックドメインでない画像」を元に生成したものを使用しないでください。
  • 「AI生成コンテンツ」のうちキャラクターを出力したものを頒布物に1/5以上または20P未満含む場合、AI生成コンテンツを含む頒布物であることを明示してください。
  • 「AI生成コンテンツ」を頒布物に1/5未満かつ20P以上含む場合、キャラクターでない「AI生成コンテンツ」を頒布物に含む場合、AI生成コンテンツを含む頒布物であることの表示を推奨します。ただし必須ではありません。
  • AIによって個人の作家を模倣するコンテンツについては、特定のケースを除き頒布を禁止します。
  • 「AI生成エンジン」そのもの、またはその使用権を頒布する場合、学習データを含まないか、使用する学習データセットが「著作権法第四十七条の五」に抵触しないものである必要があります。
  • 「AI生成コンテンツ」については既知・未知の法的リスクがあると考えられます。AIに関するリスクに限らず、頒布物に対する法的リスクについては発行サークルの責任となります。

定義


  • AI生成コンテンツ:オフライン・オンラインの別、機械学習モデル・ディープラーニング・推論型を問わず、AIを使用して生成された画像(動画・コラージュ含む)・文章・音楽・音声(歌声含む)・立体データ及びその出力物等を「AI生成コンテンツ」と定義します。
  • AI生成エンジン:機械学習モデル・ディープラーニング・推論型を問わず、ソフトウェアパッケージ・ソースコード自体・SaaS(サービス提供)モデルを問わず、AIによってコンテンツを生成するソフトウェアを「AI生成エンジン」と定義します。その使用権を頒布する場合もこれに準じます。
  • AI編集コンテンツ:オリジナルデータがAI生成でないものに対し、画像において画像の調整および切り抜き、高画質化、低画質化の加工を行う、Live2Dなど画像を動かすために使用する、音の加工フィルタ支援として、誤字脱字の指摘等、専ら編集とみなされる範囲でAI使用を行ったコンテンツについては「AI編集コンテンツ」と定義します。 「AI生成コンテンツ」の定義を満たさない限り、「AI生成コンテンツ」と区別されます。
  • 資料の調査や妥当性の確認等、調査の範囲でAIを使用し、それらを頒布物に含まないものについては本議論の対象外です。

頒布における注意事項


  • 画像を元に画像をAI生成する場合(いわゆるi2i)において、自らが著作権を持たず、また著作権者から明示的許可を得ていない画像を元に生成されたAI画像については使用しないでください。 そのような画像を含むことが判明した場合、ふたば★学園祭での頒布をお断りする場合があります。
    「画像を元に画像をAI生成する場合」においては元画像が次のいずれかである必要があります。
    • 自らが著作権を持つ画像(自作イラスト、自分で撮影した写真など)
    • 著作権者から明示的な許可を受けているもの。個別許可でなくとも、著作者が画像の無制限利用、もしくはi2iでの利用を明示的に認めているケースを含む。
    • 画像がクリエイティブコモンズライセンスであるなど、自由利用を認めるライセンスであるもの。その場合、著作者表示については元画像の指示またはライセンスの指示に従うこと。
    • 研究や評論などの目的で、引用の要件を満たす場合。この場合、元画像を提示のうえ、 引用元表示などの引用の要件を満たす必要がある。
    • パブリックドメインの画像
    文章や音楽等についても、同種の媒体を元に同種のコンテンツを生成する場合(例えば音楽を元に音楽を生成する、文章を元に文章を生成するなど。ただし文章の場合単語の羅列や指示文など「雛型とならない呼び出し文」は該当しない)は同様とします。
  • イラストなどの画像を元に立体データをAI生成する場合、またそのデータを立体物として出力する場合で、かつ元のイラストのキャラクター等と立体データが同一のものを表現していると見なされる場合、その立体データ及び立体物は元画像に対する二次的著作物(著作権法第二条(定義)十一)とみなします。 (例:イラストのキャラから、そのまま立体化するようなデータを生成し、該当キャラのフィギュアを作成するなど) このケースにおいては、元著作物より二次的著作物を生成する権利を有している必要があります。 (自分が描いたキャラをAI立体化しているなど)
    逆に立体物、立体データもしくはその写真等より画像をAI生成し、同一のものを表現していると見なされる場合においても同様です。
  • 「AI生成コンテンツのうちキャラクターを出力したもの」が書籍形態において全ページ数の1/5以上、または20ページ以上含む場合(いずれか少ない方)、データ媒体において収録時間、枚数、文字数などで1/5以上を含む場合、AI生成コンテンツを含む頒布物であることを明示してください。 明示の方法は、作品タイトル・作品の表紙もしくはパッケージ、値札またはPOPなど当日の商品案内のいずれかによることを推奨します。
  • 上記の明示が求められるケースにおいて、特別な事情でAI生成コンテンツを含むことを表示することが難しい場合(例えばAI生成であることの表示が作品の内容に対する重大なネタバレになるなど)、個別に事情を確認しますのでご連絡ください。 ただしAI生成コンテンツであることを隠蔽して頒布する目的(あるいはその目的であるとこちらが判断するケース)で非表示とすることは認められません。
  • どの種類のコンテンツ、どのような学習方法においても、AIによって特定の作家個人、もしくは特定の作家集団を模倣した(作家性を模倣する目的で学習し、作家性を模倣して生成した)コンテンツを頒布することは、次のケースを除き禁止とさせていただきます。
    • AIによって自サークルの作家自身を模倣する場合、もしくは自身が主催する作家集団を模倣する場合
    • その作家より明示的な許可を得ており、そのことを頒布物に明記している場合。このケースにおいては個別の許可でなくてもよく、その作家の明示的意思を確認できればよい。
    • 作家が既に亡くなっており、かつ著作権法の保護期間の定めにより既にその作家の著作権が喪失しており、かつ作家名が明示されている場合。この場合は遺族による著作保護の意思が継続している場合、著作者遺族の許可を得ていることが望ましい。
    このケースにおいては、評論などで引用の要件を満たす場合でも、模倣元の作家に対して無断である場合は推奨しません。
    また、この条項についてはふたば★学園祭実行委員会として、著作財産権としてではなく、著作者人格権に基づくものとして判断いたします。
  • 「AI生成コンテンツのうちキャラクターを出力したもの」が書籍形態において全ページ数の1/5未満、かつ20ページ未満含まれる場合、データ媒体において収録時間、枚数、文字数などで1/5未満を含む場合、キャラクター以外のAI生成コンテンツを含む場合(背景も含みます)、AI生成コンテンツを含む頒布物であることの表示を推奨します。(必須とはしません)
    表示の方法は任意です。
  • 「AI生成エンジン」の頒布、またはSaaSなどにおける「AI生成エンジンの使用権頒布」については次の制限があります。事前もしくは当日に個別に確認させていただきます。 要件がやや厳しく、当日に頒布をお断りすることがあることをご承知おきください。
    • 「ソースコードの頒布であって学習データを添付しない」場合、または「パッケージまたはサービスに学習データを含まず、かつ既存の特定学習データに接続せず、ユーザ自身が学習データを収集する必要がある」場合、法的リスクを明示することで頒布することができます。
    • パッケージまたはサービスに学習データを含み、または既存の学習データに接続することができるソフトウェアである場合、学習データセットが著作権法第四十七条の五(電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等)における「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に抵触しないものである必要があります。 インターネットに公開された画像など「公衆提供等著作物」のみを学習している場合でも、公衆送信権を侵害するもののデータをそうと知った上で学習データに含む場合(例えば違法アップロードが頻発するサイトなどをそうと知りつつ学習対象としている場合など)、著作権法第四十七条の五の「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に抵触するものと考えます。
    • いずれの場合においても、著作者がAIによる学習を望まないコンテンツについては学習データとして収集しないことを強く推奨します。 仕様化された機械可読的手段によってAI学習利用を禁じる表示(画像データ内にAI学習等を禁じるフラグを立てる、クローリング禁止のrobot.txtなどがある等)が為されている場合、そのコンテンツを学習しない処理を含めることを強く推奨します。 (2023/4/1時点でそのような明示的拒否の仕様は確認できていませんが、電子すかしなどによる技術的検討は進んでおり、導入できるならば導入を推奨します)
    • いずれの場合においても、オープンソースか否かに関わらず、既存のソースを改造またはカスタマイズ、あるいはそのまま頒布する場合、元ソースのライセンスに沿ったライセンス表示が必須となります。 GPLなどソース使用権等ライセンスの継承が必要な場合、元ライセンスに従ったライセンス継承を行う必要があります。
  • いずれのケースでも、学習データを元にAIを使用してコンテンツを生成し発表することについては、既知・未知の法的リスクが存在します。 特に現在において、著作権法第四十七条の五の範囲を厳密に満たす学習モデルの生成は困難である(適法性の証明が困難である)と考えられます。 (違法にアップロードされたコンテンツを学習データとした場合、著作権法第四十七条の五の認める範囲を逸脱する利用である可能性が高いです)
    AI生成コンテンツ・AI生成エンジンに限りませんが、ふたば★学園祭にて頒布する制作物における法的リスクは発行サークルが全て負うものとします。 ふたば学園祭実行委員会はその責を負いません。
    発行サークルにおいては、AI生成コンテンツがこのような法的リスクを含むことについて十分にご承知おきください。
  • 自分の作品のキャラクター生成にAI生成コンテンツを使用しておらず、それ以外の部分でAI生成コンテンツを含む可能性があるが判別が付かないなどの場合、AI生成コンテンツを含む可能性を表示しても、しなくても構いません。
  • 「AI生成コンテンツ」を含まず、「AI編集コンテンツ」のみを含む場合、特に表示の必要はありません。
  • AIまたはAI搭載型自律移動機器(ロボットやアンドロイドなど)が「ふたば学園祭参加者」の要件を満たしサークル参加者となりうる場合、かつサークルが「AI」を執筆者と認める場合、その執筆者(AI)の創作性によって作成されたコンテンツについてはサークルメンバーによる執筆とみなします。 その場合、該当著作物についてはたとえ執筆者が著作権法上の著作権を持ちうる人格として認められない場合でも、「AI生成コンテンツ」として扱わないことができます。この場合でも「AIによって特定の作家個人、もしくは特定の作家集団を模倣した」ケースについては先の条項が優先されます。
    参加者の要件は「カタログの注意事項を理解し守ることのできる知的生命体類」となっており、AIがこれを満たすためには次の要件を満たす必要があります。
    • 自律的にカタログの注意事項を理解し、守ることができること。またスタッフの注意事項を認識し、守ることができること。
    • ふたば★学園祭に参加するのに適当な形状、サイズ、安全性を備えていること。 実体があることが望ましいが、視覚的認識が可能であれば実体は必須ではない。AR体でも可。
    • カタログを購入し、またはサークル入場証にて入場が可能であること。実体を持たない場合、代理購入でも構わない。
    要件を満たせば、サークル参加または一般参加が可能です。

AIによるコンテンツ生成については発展的可能性を多く含むことから、事実上使用不可とするレベルでの厳しいルールを課することまではいたしません。 これはコンテンツの自由な可能性を重視するというふたば学園祭実行委員会の理念による選択です。
しかしながら、AI生成コンテンツに対しては著作者が不適切と考える利用事例や、著作権ではないが著作者のアイデンティティの盗用(模倣)を試みるような事例、AIによる大量生成および頒布事例などが相次いでいるのも事実です。 一部とはいえクリエイターの感情を逆撫でするような事例がかなり発生しており、センシティブ(感情的に難しい問題)になりつつあることは把握しています。
クリエイティブ(創作性)に対するメリット・デメリットの両面において、既知および未知の問題と可能性を秘めていることから、ふたば学園祭実行委員会として現状でできる仮の線引きとして上記ガイドラインを制定していることをどうかご承知おき下さい。

典拠


日本の著作権法におけるAI学習の根拠となるのは次の条文と考えられます。
著作権法 第四十七条の五(電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等)
第四十七条の五 電子計算機を用いた情報処理により新たな知見又は情報を創出することによつて著作物の利用の促進に資する次の各号に掲げる行為を行う者(当該行為の一部を行う者を含み、当該行為を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、公衆への提供等(公衆への提供又は提示をいい、送信可能化を含む。以下同じ。)が行われた著作物(以下この条及び次条第二項第二号において「公衆提供等著作物」という。)(公表された著作物又は送信可能化された著作物に限る。)について、当該各号に掲げる行為の目的上必要と認められる限度において、当該行為に付随して、いずれの方法によるかを問わず、利用(当該公衆提供等著作物のうちその利用に供される部分の占める割合、その利用に供される部分の量、その利用に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものに限る。以下この条において「軽微利用」という。)を行うことができる。 ただし、当該公衆提供等著作物に係る公衆への提供等が著作権を侵害するものであること(国外で行われた公衆への提供等にあつては、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものであること)を知りながら当該軽微利用を行う場合その他当該公衆提供等著作物の種類及び用途並びに当該軽微利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 電子計算機を用いて、検索により求める情報(以下この号において「検索情報」という。)が記録された著作物の題号又は著作者名、送信可能化された検索情報に係る送信元識別符号(自動公衆送信の送信元を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう。第百十三条第二項及び第四項において同じ。)その他の検索情報の特定又は所在に関する情報を検索し、及びその結果を提供すること。
二 電子計算機による情報解析を行い、及びその結果を提供すること。
三 前二号に掲げるもののほか、電子計算機による情報処理により、新たな知見又は情報を創出し、及びその結果を提供する行為であつて、国民生活の利便性の向上に寄与するものとして政令で定めるもの

2 前項各号に掲げる行為の準備を行う者(当該行為の準備のための情報の収集、整理及び提供を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、公衆提供等著作物について、同項の規定による軽微利用の準備のために必要と認められる限度において、複製若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この項及び次条第二項第二号において同じ。)を行い、又はその複製物による頒布を行うことができる。 ただし、当該公衆提供等著作物の種類及び用途並びに当該複製又は頒布の部数及び当該複製、公衆送信又は頒布の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

二次的著作物の定義は次の通りです。いわゆる「二次創作」とは異なります。
著作権法 第二条(定義)
十一 二次的著作物 著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。

日本国の著作権法における保護期間の原則は下記の通りです。このほか、戦時加算規定などの例外があります。
著作権法 第五十一条(保護期間の原則)
2 著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。次条第一項において同じ。)七十年を経過するまでの間、存続する。

「頒布物に1/5以上または20P以上含む」という量的ラインについては、神奈川県青少年保護育成条例 第十条(有害図書類の指定及び販売等の禁止)における包括指定の量を参考としています。
単に包括指定のラインの参考にした以上の意味はありません。

本稿におけるAIとはArtificial Intelligence(人工知能)を指します。 Adobe Illustratorではありません。

「AI生成コンテンツ」のイラストをトレスしたものなど、AI生成コンテンツのコピーという解釈が可能なコンテンツについては、現状どのようなコンテンツにあたるかの解釈が困難です。 このようなコンテンツについては、ふたば学園祭実行委員会としての解釈を一旦保留とさせていただきます。

ガイドラインについて疑問がある場合、過去の出版物に対する取り扱いに対する疑問、こういう出版物はどの区分に該当するのかなどの疑問がある場合は、info@futaba-only.netまでお問い合わせください。
本ガイドラインについて(他団体の方が)参考にして頂くことは構いませんが、法律の専門家などの確認を受けたものではなく、ふたば学園祭実行委員会の独自の見解であることをご承知おき下さい。 ふたば★学園祭というイベントの特殊事情による条文がいくらか含まれます。


上記方針については変更される場合があります。予め御了承下さい。